独自のローリングナノインプリントリソグラフィ(以下、RNIL)用の光学エンジンを開発し、技術革新を遂げてきました。この光学エンジンは、特許を取得しており、ナノインプリント構造の研究者や大量生産に最適です。
ナノインプリント構造は、スタンプ(テンプレートまたはモールド)を液状の樹脂に押し当て、その後樹脂を硬化させることで形成できます。
ナノインプリント光学エンジン(UV露光を実行する部分)には、処理時間を短縮するために、紫外線(UV)が採用されています。高歩留まり生産の実現には、スタンプ圧とローリング速度の最適化も重要な要素となります。
このテクニカルノートを読む事で、Setnsborg社の独自の (1) 光学エンジンの技術的詳細や(2) 光学エンジンの設計根拠を詳しく理解することができます。
目的と課題
RNIL大量製造プロセスの目的と課題を理解することは、光学エンジンのパフォーマンスを評価するうえで不可欠です。ロールツーロール(以下、R2R)やロールツープレート(以下、R2P)などの高速ナノインプリントの技術によって、高いスループットを実現することが可能となりました。その一方で、品質を維持する必要があります。
品質維持の主な課題:
- エラーなく微細構造を転写(>10,000個)
- 再現性
- UV光の強度
- スタンプの圧力
- 回転速度
- 気泡や欠陥なく、スタンプから剥離
- 硬化中、十分なUVエネルギーを均一に照射
-
電力消費
光学エンジンの概要
Stensborg社は、業界で20年以上にわたって蓄積された経験に基づいて、課題に対処するナノインプリント光学エンジンを開発しました。
光学エンジンの優れた機能は、2点あります。
(1) ニップ設計(NIP)
RNILプロセスで、図2で示すように接触面積が小さな線状になっており、少ないインプリント力で、UV光強度量を適切に提供できます。R2R 生産では最大50メートル/分と、非常に高いスループットを実現できます。またインプリントプロセスの正確な制御により、パフォーマンスと再現性を向上します。回転速度と紫外線の強度を下げることで、さらに高い精度を実現できます。
(2) 光学エンジン
光学エンジン設計はモジュール式で、印刷幅を数メートルまで拡張可能です。同じ基本光学エンジンはStensborg社の肝で、プロトタイプ製造用のデスクトップR2Pナノインプリンター内部、大量生産用のカスタム構築したナノインプリンターマシンにすべて搭載されています。図1は、光学エンジンの概略図(側面)を示しています。このエンジンには、図2に示すように、LED からの光を線状に集束させる UV 光源と光学系が含まれています。
UV光源
高速RNILで樹脂を硬化させるには、熱ではなくUV光が推奨されます。樹脂を完全に硬化させるには、一定量のエネルギー (E) が必要で、光の強度 (I) と樹脂がさらされる時間 (Δt) で異なります。
E = I*Δt
独自の光学エンジン設計が、それぞれの課題を解決しています。
(1) ニップに高い強度のUV光を集中
- ニップ構造が高い照射強度を実現
- 樹脂の収縮を軽減しつつUV硬化できる
(2) 樹脂硬化の紫外線光源にLEDを採用
- 電力効率が良い
- 長寿命(10,000時間以上)
(3) LEDの中心波長は395nm(樹脂硬化に最も効率的で低コスト)
図 3 のように、ほとんどの樹脂は約300-400nm未満の波長で紫外線を吸収
※ポリエチレンテレフタレート (PET), ポリ塩化ビニル (PVC), ポリカーボネート (PC)
(4) LEDの配列
UV-LED の列を使用してライン照明を形成します。各UV-LEDの発光面は、約1.5mm x 1.5mmの正方形です。これにより細い直線への効率的な光結合を実現しています。LEDモジュールには、複数のLEDが搭載されており、隣り合うLEDモジュールを追加することで照明ラインの長さを延長できます。
光学系
ニップにLEDをライン形状に焦点を結合させ、高強度のビームを集光させるために、フレネルレンズを活用した光学設計がされています。光学エンジン内部に使用された薄いフレネルレンズは、重量とサイズが大幅に削減でき、標準レンズに比べUVの吸収を低くする役割を担っています。また、レンズとインプリントローラー、特殊なUV透過アクリルを採用しています。これは、レンズ材料(ガラスまたはポリマー)のUV光吸収の性質を回避するための工夫です。
UV-NILのプロトタイプ製造プロセスを身近なものに
微細表面構造のプロトタイプ製造には、R2R NanoImprinter が理想的なツールとなります。この記事の通り、Desktop R2R NanoImprinterは、特許取得済みの光学エンジンに基づいて構築されています。このツールを使用することで、圧力と光量を調整し、特定の構造と材料に適したUV-NILローリングプロセスを開発できます。プロトタイプツールと量産マシン内で、同じモジュール式光学エンジンが使用されているため、プロトタイプから量産への拡張が容易になります。またデスクトップサイズのコンパクトさで、どなたでも、使用環境を問わず、試作に取り組めることが、ご研究者様の最大のメリットとなります